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離婚についての知識knowledge

保護命令

保護命令とは

保護命令とは、裁判所が、被害者の申立てにより、配偶者の暴力から被害者の生命・身体を守るため、一定期間、加害者を被害者から引き離すために発する命令のことです。保護命令に違反した場合には刑罰(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が科されます。

夫の暴力から逃れ身の安全を守るために、DV防止法が制定される以前は、接近禁止の仮処分という民事保全手続が利用されていましたが、違反しても罰則がなく、不十分でした。
裁判所が出す保護命令には、「接近禁止命令」と「退去命令」があります。

「接近禁止命令」は、被害者の身辺への「つきまとい」や、被害者の住居、勤務先その他通常所在する場所付近での「はいかい」を禁止する裁判所の命令です。有効期間は6か月間です。再度の申立ても可能です。

「退去命令」は、同居している住居からの退去及びその住居の付近での「はいかい」を禁止する裁判所の命令です。有効期間は2か月間で、やむを得ない場合には、再度の申立ても可能です。
なお、元配偶者に対する保護命令及び被害者と同居する未成年の子への接近禁止命令も認められています。

保護命令の要件

保護命令が認められるためには、以下の要件が必要です。

配偶者から、身体に対する暴力を受けたこと

暴力の定義に、身体に対する暴力だけでなく、「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」が含まれることになりましたが、保護命令は、身体に対する暴力を受けた場合に限られます。

配偶者(元配偶者を含む)からの、さらなる身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと

これまで暴力をふるってきた夫が、妻の別居先の住居をつきとめて、しつこくつきまとっている場合などは、妻が再び暴力をふるわれるおそれは大きく、「生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい」といえます。

子への接近禁止命令を求める場合は、さらに、配偶者(元配偶者を含む)が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があること

保育園の前で待ち伏せすることや、子供に会わせろと強要するような場合が予想されるような場合等がこれにあたります。

保護命令の申立

管轄

①相手方の住所の所在地を管轄する地方裁判所、②申立人の住所又は居所を管轄する地方裁判所、③暴力が行われた地を管轄する地方裁判所のいずれにも申立てができます。

申立書面

保護命令の申立ては、書面によることが必要です。申立書その他の記録は、相手方が閲覧・謄写できますので、申立人が避難先等を秘匿している場合には、従前の住所等を申立人の住所として記載するなどの注意が必要です。
申立書面には、①身体に暴力を受けた状況、②さらなる暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい事情、③子への接近禁止命令を得たい場合は、配偶者(元配偶者を含む。)が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情、④配偶者暴力相談支援センターや警察に保護を求めていた場合は、その旨及び所定の事項を記載します。
①から③の事情については、暴力を受けた際の状況、その際の夫の態度や言葉、つきまといの状況等を、できるだけ具体的に詳しく記載します。直近に暴力をふるわれていなかった場合でも、その理由(暴力をふるわれた時の恐怖心から、妻が、夫に逆らうことができず、夫の顔色をうかがいながら暮らしたため、暴力を受けずにすんだこと等)によっては、保護命令を得ることは可能です。

申立ての際には、申立ての事情を裏付ける資料を提出します。暴力によりケガをした場合、その診断書又は写真があれば、暴力をふるわれたことの有力な証拠となります。暴力の直接の証拠が無い場合でも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した場合の診断書や暴力を受けた際の状況を詳述した陳述書によって、保護命令が認められた例もあります。

審尋

申立てが受理されると、速やかに審尋が行われます。その後、申立書や書証の写し等を相手方に送付し、1週間から10日程度の内に相手方の審尋を行う運用がなされているようです。裁判所は、申立人が保護を求めた配偶者暴力相談支援センター又は警察に対し、所定の書面の提出を求め、必要があればさらにその内容について説明を求めます。