解決事例 ~不貞相手に対する慰謝料請求について慰謝料額160万円が認められた事例~
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依頼者・相談者
女性・20代
背景・相談内容
妻Aと夫Bは、結婚して4年目の夫婦で、3歳になる子がいました。
夫Bは、マッチングアプリで未婚者と偽り、女性Cと交際していました。
妻Aは、夫Bの行動が怪しいと感じたので、探偵に調査の依頼をして、夫Bと女性Cの不貞関係の証拠を確保しました。
妻Aは、弁護士を通じて、女性Cに対して、夫Bとの交際の解消と慰謝料の支払いを求める通知書を内容証明郵便の方法によって送付しました。
女性Cは、妻Aに対し、夫Bが独身であると認識していたので不貞行為の故意がなかった、もっとも夫Bが既婚者であると分かった以上は交際するつもりはないので別れるとの返事をしました。
妻Aは、慰謝料の支払いよりも、夫Bと女性Cが別れることを望んでいたので、このような返事を受けて、一旦様子を見ることにしました。
ところが、数か月後、夫Bと女性Cの交際が解消されていないことが発覚しました。
夫Bのこのような不誠実な対応を受け、妻Aは夫Bと離婚すると共に、女性Cに対して、慰謝料の支払いを求める訴えを提起しました。
手続きの流れ
女性Cの反論
①女性Cは、不貞行為の当初は、夫Bが独身であると思っていたので、不貞行為の故意・過失がない。
②妻Aと夫Bの婚姻関係は破綻していたので、夫Bとの交際は不法行為にならない。
裁判所の判断
・女性Cの反論についての判断
①について 弁護士が送付した通知書を内容証明郵便にて受け取ったとき以降の不貞行為については、故意又は重過失が認められる。
②について 妻Aと夫Bの婚姻関係については、夫Bが自宅に戻らず外泊を続ける状態が継続していたことは事実であるが、一方で、妻Aと夫Bは一緒に食事をしたり、性交渉も複数回行っていた等の事実もあるので、両者の婚姻関係が破綻していたとは認められない。
・損害賠償の金額
慰謝料 160万円
弁護士費用 16万円
探偵の調査費用 0円
担当弁護士のコメント
不貞行為を行った相手に対して、損害賠償請求が認められるには、当該不貞行為が、民法709条の不法行為に該当すると判断される必要があります。
不法行為の成立には、加害行為について故意又は過失があったことが必要になります。
不貞行為の紛争のなかでよくなされる反論が、交際相手が既婚者であると知らなかったというものです。
独身者と交際することは自由ですので、真実、交際相手が独身者であると信じて交際した場合には、交際相手が既婚者であったとしても、加害行為ついて故意・過失がなく、不法行為は成立しないと判断されることがあります。
本件においても、女性Cはそのような反論をしましたが、弁護士が送付した通知書を受け取ったことによって、女性Cは、夫Bが既婚者であることを明確に認識したことになるため、それ以降の交際については、不法行為の故意又は重過失があると認定されました。
次に、不貞行為が、民法上の不法行為として責任を負うことになるのは、不貞行為が平穏な夫婦生活を送る権利を侵害するとされているからです。
そのため、婚姻関係が破綻した以降の男女交際は、法律で保護される権利が既に失われているため、不法行為の成立が認められないとされています。
本件においては、妻Aと夫Bは、半ば別居関係にあったものの、互いに連絡を取り合い、一緒に食事をしたり、性交渉も行ったり等の関係があったので、婚姻関係が破綻しているとまでは認定されませんでした。
最後に、探偵の調査が、不法行為に基づく損害賠償請求を行うために必要と認められた場合は、同調査費用は加害行為と相当因果関係のある損害として、損害賠償の範囲に含まれます。
本件では、妻Aは、夫Bのスマートフォンを確認したところ、女性CとのLINEのやり取りや女性Cの写真があったことから不貞行為を疑い、探偵に調査を依頼したという経緯がありました。
そして、探偵の調査の結果、夫Bが女性Cの家で宿泊したことや、女性Cの本名、住所が発覚しました。
このような事情に鑑みれば、探偵の調査費用も一定程度は損害賠償の範囲に含まれても良いかと思います。
しかし、裁判所は、探偵の調査費用を相当因果関係のある損害とはしませんでした。
裁判所としては、LINEのやり取りと写真があれば不貞行為の証拠としては十分であり、探偵に調査を依頼する必要がないと判断したのでしょうか。
この点、判決では、「(探偵の調査費用については、)上記認定したとおりの原告の被告に対する本訴提起に至る経緯に照らし、被告の不貞行為と相当因果関係がある損害であるとは認められない。」としか判断されていません。
そして、「上記認定したとおり」とありますが、その余の部分を精査しても、探偵の必要性等には言及されてもいませんでした。
慰謝料の金額自体は相応の結果が得られたと思いますが、探偵の調査費用については疑問が残る判決でした。