履行勧告について
- コラム
履行勧告とは
履行勧告とは、権利者の申出がある場合に、家庭裁判所が、審判または調停で定められた義務等の履行状況を調査し、義務者に対してその義務の履行を勧告する手続きをいいます(家事事件手続法289条)。
履行勧告の異議
履行勧告は、強制力や罰則を伴う手続きではありません。
しかしながら、家事事件における義務は、性質上、義務を実現するにあたって強制的な手続きを執る前に、義務者に履行を促して、自発的に義務を履行させるようにすることが望ましいといえるため、履行勧告は、このような要請に応じた制度となっています。
履行勧告の手続
申出
履行勧告は、権利者の申出があった場合に行われます。
申出の方式については定めがなく、書面の申出、口頭での申出どちらでも構いません。
履行勧告の申出書の書式は、裁判所のウェブサイトにて確認することができます。
裁判所サイトはこちら
申出に手数料は必要ありません。
履行勧告は、何度でも行うことが可能です。
管轄裁判所
履行勧告は、その義務を定めた裁判所の管轄となります(家事事件手続法289条1項)。
ただし、抗告裁判所が義務を定める裁判をした場合は、第一審の裁判所である家庭裁判所が、高等裁判所が審判前の保全処分として裁判をした場合は本案の家事審判事件の第一審裁判所である家庭裁判所が、履行勧告の管轄となります。
また、義務者が遠方にいるなど、管轄裁判所による手続きがスムーズに実施できないような場合は、管轄裁判所は、他の家庭裁判所に、履行状況の調査・勧告を嘱託することができるとされています(家事事件手続法289条2項)。
履行勧告の対象
履行状況の調査及び履行勧告の対象となる義務は、審判で定められた義務、調停又は調停に代わる審判で定められた義務、調停前の処分として命じられた事項です。
また、これらの義務は、金銭の支払などの財産給付義務に限られず、面会交流に応じる義務や、夫婦同居の義務なども含まれます。
履行状況の調査
調停や審判で定められた義務が、その内容に従って履行されているかどうか、履行されていないのであればどのような理由で履行されていないのか等、履行状況を裁判所が認識するため、家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に履行状況の調査をさせることができるとされています(家事事件手続法289条3項)。
履行の勧告
家庭裁判所は、正当な事由なくして義務を履行しない者に対して、履行するように勧めます。
勧告の方法は、適切と認められる方法で足り、口頭や書面で行うことを問いません。
履行勧告の手続の終了
家庭裁判所は、①調査・勧告を行わないことが相当と認めるとき、②調査・勧告を終了させて差し支えないと認めるときは、裁判官の認定により事件を終了させます。
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