双方が離婚に同意している場合に離婚原因が認められるか
- 離婚原因
離婚については夫婦ともに同意しているものの、親権、養育費、財産分与などの条件に折り合いがつかないがために離婚が成立しない場合があります。
このような場合、離婚訴訟において離婚原因が認められるのかについて本コラムでは解説いたします。
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親権以外は離婚成立後に取り決めることも可能
親権については、離婚時に決めておかなければなりませんが、その他の条件については、離婚後に決めることも可能です。
そのため、場合によっては、離婚成立後にその他の条件を決めるための手続をとることも考えられます。なお、手続をとることができる期間には制限があるため注意が必要です。例えば、財産分与の請求は、離婚の成立から2年以内となります。
とはいえ、やむを得ない事情がない限り、離婚時に全て条件を決めておくことが望ましいといえます。そのため、離婚条件に折り合いがつかず、協議が決裂し、さらに離婚調停も不成立となった場合には、裁判にて離婚条件を判断してもらうことになります。
## 裁判上の離婚原因が認められるか
民法770条が定める離婚原因は下記の5つとなります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な理由
上記①~④の事情がない場合であっても、双方が離婚に応じている場合が、⑤「その他婚姻を継続し難い重大な理由」と評価できるか(離婚原因が認められるか)が問題となります。
この点、離婚請求訴訟において、原告・被告双方が離婚を求めていたり、婚姻関係の破綻を認めているような場合、裁判所はその事実を基にして「婚姻を継続し難い重大な理由」を認める傾向にあるようです。以下、過去の裁判例をご紹介します。
裁判例
長野地裁 昭和35年3月9日
妻と夫の家族との不仲が原因となり、妻が夫に対して調停を申し立てました。夫も離婚すること自体には問題ありませんでしたが、慰謝料等財産上の処理について話がまとまらなかったために裁判となった事例です。
裁判所は、妻及び夫が、それぞれ離婚の請求をなし、客観的にもその婚姻が破綻していると認められる場合、しかもこの訴訟によって離婚にまつわる財産関係の包括的終局的処理がはかられる場合には、すすんで離婚原因の仔細な探究、その中でも夫婦のどちらに主たる責任があるかなどの具体的究明をまつまでもなく、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、双方の離婚請求をともに理由ありとなすべきものと判断しました。
東京地裁 平成19年3月28日
夫が妻に対して離婚を求めた(本訴)のに対し、妻が夫に対して離婚を求めるとともに、離婚に伴う財産分与及び慰謝料を求めた(反訴)事案です。
裁判所は、夫と妻は、性交渉を除き円満な夫婦関係にあったが、妻が夫に対して子供を欲しい旨強く申し入れたのに対し、夫がこれを拒絶し、これをきっかけとして夫が何の理由も説明しないまま一方的に離婚を決め、別居を始めた上、強く離婚を求めた結果、妻においても夫婦関係が修復不能と判断し、離婚を決意するに至ったと認定しました。
以上のことから、夫と妻の婚姻関係は既に破綻しており、両当事者においても婚姻関係が破綻しているとの認識を有しているから、婚姻を継続しがたい重大な事由が存在するものと認められると判断しました。
福岡家裁 平成28年3月18日
夫が、妻に対し、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚を請求するとともに、長女及び長男の親権者をいずれも夫と指定することを求めた事案です。妻は離婚請求は争っていないものの、長女及び長男の親権者をいずれも妻と指定することを求めました。
裁判所は、原告と被告との婚姻関係が修復不可能であり、既に破綻していることは、当事者間に争いがないので、本件では婚姻を継続し難い重大な事由が認められ、夫の妻に対する離婚請求は理由があると判断しました。
まとめ
このように、夫離婚については夫婦ともに同意している場合について、「その他婚姻を継続し難い重大な理由」と判断される傾向にあるようです。
離婚については夫婦が同意しているものの、離婚条件に折り合いがつかないなどの場合でお悩みの方は、ご相談いただければと思います。
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