不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者への財産分与について
- 不貞行為
夫または妻の様子がおかしく、浮気や不倫を疑って悩んでおられる方もいるかもしれません。
浮気や不倫の定義は人によって異なりますが、離婚や慰謝料請求を考えたときに法律上問題となるのは、その行為が「不貞行為」に該当するかどうかとなります。
一般的に使われる「浮気」や「不倫」が必ずしも「不貞行為」に該当するわけではありません。
第3回目となる今回のコラムでは、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者からの財産分与請求を受けた場合、財産分与に応じる必要はあるか、または財産分与の金額を減額する方法はあるのかについて解説いたします。
目 次 [close]
財産分与について
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
民法第768条1項
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することを言います。
一方の配偶者のみ収入がある場合でも、他方の配偶者は家事等で貢献したと考えられ、原則的には2分の1ずつ分け合うことになります。
財産分与の種類
財産分与には、婚姻期間中に夫婦で共同して形成した共有財産を、離婚時に分配することによって、精算する目的があります。
また、財産分与には、精算目的のほか、離婚によって生活が苦しくなってしまう配偶者のために、経済的に自立できるまで支援する目的で金銭の分与を行う扶養的な目的もあります。
さらに、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者のように、一方の配偶者の有責行為によって離婚に至った場合は、慰謝料を請求することができますが、財産分与の額を調整することによって慰謝料分を精算するといった、慰謝料的な目的で財産分与を行うこともあります。
なお、本来は、財産分与と慰謝料は別の問題ですので、慰謝料的財産分与が認められるか否かは、ケースバイケースです。
有責配偶者とは
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法770条1項
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他の婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
民法では上記の5項目を法定の離婚事由として定めています。
有責配偶者とは、この法定離婚事由に該当する行為を行って、夫婦関係を破壊した配偶者のことを言います。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者は有責配偶者
不貞行為(浮気・不倫)は民法770条1項1号で定められた離婚事由となりますので、不貞行為(浮気・不倫)を行った配偶者は有責配偶者となります。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者からの財産分与請求は認められるか
相手方配偶者が不貞行為(浮気・不倫)をして離婚の原因を作ったのだから、相手方には財産分与を請求する権利はないと考えられる方も中にはいらっしゃいます。
しかし、前述したように、財産分与は、婚姻期間中に夫婦で共同して形成した共有財産を、離婚時に分けることによって精算することが目的です。ですので、離婚の有責性は、財産分与とは別の問題と考えられており、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者からの財産分与請求も認められます。
ただし、上述のとおり、財産分与においては、慰謝料的な要素を含めることもありますので、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者側の財産分与の金額を減額するなどして分与額を調整することも、場合によっては考えられます。
ここで注意しなければならないのが、不貞行為(浮気・不倫)により精神的損害を受けたとして慰謝料請求をしても、受け取った財産分与に慰謝料的要素が含まれていた場合は、すでに相当の慰謝料が支払われたものとして、慰謝料の額が減額されてしまう可能性があることです。
不貞行為(浮気・不倫)の慰謝料として請求するか、財産分与に慰謝料的要素を含めて請求するかを迷われた場合は、一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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