不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者と親権について
- 不貞行為
夫または妻の様子がおかしく、浮気や不倫を疑って悩んでおられる方もいるかもしれません。
浮気や不倫の定義は人によって異なりますが、離婚や慰謝料請求を考えたときに法律上問題となるのは、その行為が「不貞行為」に該当するかどうかとなります。
一般的に使われる「浮気」や「不倫」が必ずしも「不貞行為」に該当するわけではありません。
第4回目となる今回のコラムでは、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者に親権は認められるかについて解説いたします。
目 次 [close]
親権について
親権とは子どもの財産を権利する権利義務である「財産管理権」と、子どもを心身共に健全な大人に養育するために認められる「身上監護権」からなります。婚姻中は夫婦が共同で親権を行使しますが、離婚の際は、父母のどちらか一方を親権者として指定しなければなりません。未成年の子どもがいる場合、その子どもの親権を決めなければ離婚届は受理されないこととなっています。
子どもを引き取った親が親権者となり、親権と監護権を行使することが一般的ですが、親権者と監護権者を別々に定めることも可能です。
親権者の決定についての裁判所の判断基準
裁判において親権者を指定する場合、父母のどちらが親権者であることが最も子どもの利益となるかで判断されることとなります。一般的に下記のような親の事情、子どもの事情を比較考量 しながら決定されます。
- 親の事情の代表例
子どもの監護体制(経済力、居住環境、家庭環境、教育環境)
子どもに対する愛情や監護意思
性格や心身の健康状態
監護の継続性 - 子供の事情の代表例
年齢や心身の状況
子どもの意思
これまでの監護環境
兄弟姉妹の関係
有責配偶者とは
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他の婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
(民法770条1項)
民法では上記の5項目を法定の離婚事由として定めています。
有責配偶者とは、この法定離婚事由に該当する行為を行って、夫婦関係を破壊した配偶者のことを言います。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者は有責配偶者
不貞行為(浮気・不倫)は民法770条1項1号で定められた離婚事由となりますので、不貞行為(浮気・不倫)を行った配偶者は有責配偶者となります。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者であっても、親権者になれるか
上記のとおり、親権者の指定には子どもの利益が最優先されます。離婚原因と親権者の指定は別問題として扱われ、不貞行為(浮気・不倫)をした有責配偶者であっても、原則として親権者になりえます。
不貞行為(浮気・不倫)が原因で親権者になれない場合
ただし、以下のような事情が認められるときは、親権者として不適切であると判断される可能性があります。不貞行為が直接の原因ではありませんが、不貞行為を契機として子どもの監護養 育がおろそかになり、親権者に指定すると子どもに悪影響を与えると考えられるからです。
- 不貞相手との交際により家事・育児がおろそかになった
- 不貞相手が子どもに虐待を行っていた
- 不貞発覚後、子どもをおいて家を出ていった
- 不貞相手に経済的に依存している
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者が親権を獲得するための手続
親権は、慰謝料や財産分与など、その他の離婚条件と併せて決められることもあります。その他の離婚手続きと同様、協議、調停、裁判と段階を踏むことになります。
協議
まずは夫婦間でどちらが親権を取るかじっくり協議してみましょう。不貞行為(浮気・不倫)をしてしまった負い目から、相手に自分の要求を伝えにくいかもしれません。しかし、これまでの養育の実績(食事、洗濯、送り迎え、学校行事への参加など)を具体的に伝え、自身が親権を取ることが子どもにとって利益になることを主張しましょう。
調停
不貞行為(浮気・不倫)をしてしまった場合では、なかなか協議で離婚条件がまとまるケースは少ないでしょう。その際は家庭裁判所に調停を申立てることとなります。調停手続きでは調停委員が双方の言い分を聞いた上で、客観的事実も考慮しながら、どちらが親権者として相応しいのか話し合いの中で解決していきます。
調停中は家庭裁判所の調査官による調査が行われることもあります。調査官調査では双方からそれまでの養育の実績の聞き取り、家庭訪問による住環境の調査、子どもとの面談、学校や幼稚園の先生からの聞き取りなどが行われます。
調停でも折り合いがつかない場合は審判に移行することもありますが、調停が不成立になった場合は裁判で争うことが一般的です。
裁判
裁判でも調停と同じく、「父母のどちらを親権者と指定したほうが子どもの利益となるか」という観点で親権者が指定されます。これまでの養育実績について主張しても、相手側から否定されることもありえます。そのため、これまでの養育実績を裏付ける客観的な証拠を提出できるかが重要となります。日記やSNSなどで育児に関することや、子どもの成長を記録していれば、証拠となる可能性もあります。
親権者の変更
民法819条6項では「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる」と定めています。
親権者の変更は父母の協議によって合意している場合でも、必ず家庭裁判所の調停・審判が必要となります。申立は父母に限らず、祖父母やおじやおば等の親族でも可能ですが、子自らが申し立てることはできません。
また、親権者の変更が認められるのは、虐待や育児放棄、養育環境の著しい変化、親権者の病気や死亡など、親権者の変更が子どもの利益のために必要とされる場合に限られます。また、子どもが15歳以上となると、ある程度の判断能力が備わっていると考えられるため、子どもの意思を尊重して親権者の変更が認められることもあります。
- 2021.09.06
不貞行為(浮気・不倫)を理由とする離婚の進め方について - 2021.08.30
不貞行為(浮気・不倫)の証拠について - 2021.08.23
不貞行為(浮気・不倫)の相手方の責任について