不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者への養育費の支払いについて
- 不貞行為
夫または妻の様子がおかしく、浮気や不倫を疑って悩んでおられる方もいるかもしれません。
浮気や不倫の定義は人によって異なりますが、離婚や慰謝料請求を考えたときに法律上問題となるのは、その行為が「不貞行為」に該当するかどうかとなります。
一般的に使われる「浮気」や「不倫」が必ずしも「不貞行為」に該当するわけではありません。
第5回目となる今回のコラムでは、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者へ養育費を支払う必要があるか、養育費の減額を主張できるかについて解説いたします。
目 次 [close]
養育費について
父母には離婚後も子どもを扶養する義務があります。離婚によって、父母のどちらかが親権を取得し監護することになりますが、子どもの監護には、教育費や医療費、食費、被服費など、様々なお金が必要となります。子どもと別居して監護親とならない親は、監護親となった親に対して、こういった子どもの監護にかかる費用を支払わなければなりません。この費用を養育費といいます。
養育費は、子どもが最低限の生活ができるための「扶養義務」ではなく、非監護親が、自分の生活を保持するのと同程度の生活を子どもにもさせる「生活保持義務」によるものと考えられています。それゆえ、生活に余裕がないため養育費を支払えないという主張は成り立ちません。(※非監護親が生活保護を受けているなど、支払い能力がないと認められる場合は、この限りではありません。)
養育費の額についての判断基準
養育費の額について、協議離婚では夫婦間での話し合いで自由に決めることが出ます。協議で養育についての話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判を利用することとなります。
養育費は、支払う側と受け取る側の年収、子どもの人数、子どもの年齢を考慮して算出されます。家庭裁判所でも使用される養育費算定表を目安に、それぞれの家庭の事情を考慮して金額を決定することが多いです。
養育費算定表はこちら
有責配偶者とは
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他の婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
民法770条1項
民法では上記の5項目を法定の離婚事由として定めています。
有責配偶者とは、この法定離婚事由に該当する行為を行って、夫婦関係を破壊した配偶者のことを言います。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者は有責配偶者
不貞行為(浮気・不倫)は民法770条1項1号で定められた離婚事由となりますので、不貞行為(浮気・不倫)を行った配偶者は有責配偶者となります。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者に対しての養育費の支払い
子どもの親権について、不貞行為(浮気・不倫)をした有責配偶者が親権者として指定される可能性もありうることは前回コラムでも解説したとおりです。
不貞行為(浮気・不倫)をした有責配偶者が親権者として指定された場合、もう一方の配偶者は、不貞行為(浮気・不倫)をした有責配偶者に養育費を支払うこととなるでしょう。不貞行為(浮気・不倫)をされた側としては、離婚の原因を作った側に金銭を支払うことに抵抗感があるかもしれませんが、養育費はあくまでも子どもために支払われるものであり、親としての義務でもあります。養育費と離婚原因は別問題であるため、不貞行為(浮気・不倫)を理由に養育費を支払わなかったり、減額するといったことは認められません。
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