不貞行為(浮気・不倫)を理由とする慰謝料の請求について
- 不貞行為
夫または妻の様子がおかしく、浮気や不倫を疑って悩んでおられる方もいるかもしれません。
浮気や不倫の定義は人によって異なりますが、離婚や慰謝料請求を考えたときに法律上問題となるのは、その行為が「不貞行為」に該当するかどうかとなります。
一般的に使われる「浮気」や「不倫」が必ずしも「不貞行為」に該当するわけではありません。
第6回目となる今回のコラムでは、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者に対する慰謝料の請求について解説いたします。
目 次 [close]
慰謝料の基礎知識
慰謝料とは、不法行為や債務不履行によって被る精神的苦痛を慰謝するための損害賠償として支払われます。
不貞行為(浮気・不倫)は夫婦の貞操義務に違反する不法行為であるため、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者には損害賠償責任が生じます。
慰謝料の中には、『離婚することに対する慰謝料』、『不貞行為に対する慰謝料』の2つを含んでいると考えられます。
不貞(浮気・不倫)相手の責任
不貞行為(浮気・不倫)は、有責配偶者と不貞(浮気・不倫)相手との共同不法行為となります。よって有責配偶者と不貞(浮気・不倫)相手の双方に対して、慰謝料を請求することができ、有責配偶者と不貞(浮気・不倫)相手は連帯して慰謝料請求の責任を負います(これを不真正連帯債務と言います)。
ただし、どちらか一方から慰謝料の満額を受領した場合には、もう一方に対して、更なる慰謝料の支払を求めることはできません。
例えば、200万円の慰謝料が認められる場合、有責配偶者と不貞(浮気・不倫)相手双方に全額の200万円を請求することになりますが、両者から200万円ずつ、合計400万円を受け取ることはできず、両者の合計が200万円となる範囲でのみ受け取ることになります。
慰謝料の相場
不貞行為(浮気・不倫)を理由として裁判で慰謝料を請求した場合、50万円~300万円の範囲内で定められることが多いです。慰謝料の金額については明確な基準はなく、様々な事情を考慮して総合的に判断されます。
不貞行為(浮気・不倫)を理由とする慰謝料の金額については、次回コラムにて詳しく解説いたします。
請求手続き
具体的に慰謝料を請求する場合について解説いたします。
配偶者への慰謝料請求
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者へ慰謝料を求める場合、離婚をするかしないかで請求方法が異なります。
離婚する場合
不貞行為(浮気・不倫)が原因で離婚する場合、有責配偶者には協議、調停、訴訟、それぞれの場で慰謝料請求を主張することになります。
離婚しない場合
離婚はせずに慰謝料だけを請求する場合は、不法行為に基づく損害賠償請求の交渉または訴訟の場で慰謝料を主張することになります。
不貞(浮気・不倫)相手への慰謝料請求
まず、不貞(浮気・不倫)相手が不貞行為(浮気・不倫)を否定している場合、不貞行為(浮気・不倫)があったことを示す客観的証拠がないと、裁判所は不貞行為(浮気・不倫)を認めてくれません。慰謝料請求をする前に、不貞行為(浮気・不倫)を裏付けるメールやSNS、写真などの証拠を揃えましょう。
次に、不貞(浮気・不倫)相手に慰謝料を請求する場合は、不貞(浮気・不倫)相手に故意または過失(不注意)があって不貞行為を行った必要があります。
故意は、有責配偶者が既婚者であることを知っていた場合に限らず、「もしかしたら既婚者かもしれない」という程度の認識でも認められる場合があります。また、有責配偶者が独身であると偽っていた場合でも、交際期間を通じて既婚者であると気づかなかったことに不注意がなかったと言える場合はそれほど多くないと考えられます。故意が認められず過失のみの場合は、慰謝料が減額されることもあります。
また、不貞行為(浮気・不倫)の時点ですでに婚姻関係が破綻していた(長期間別居状態であった)場合、不貞(浮気・不倫)相手に慰謝料を請求することはできません。
慰謝料請求の時効
不貞行為(浮気・不倫)を理由とする慰謝料請求には時効があります。時効が完成すると、原則として有責配偶者、不貞(浮気・不倫)相手に対して慰謝料を請求できなくなります。
慰謝料請求の時効は原則3年
民法では不法行為による損害賠償の時効について、下記のように定めています。
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
民法724条
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
慰謝料を請求する権利は、「不貞行為(浮気・不倫)があったことや、不貞(浮気・不倫)相手を知ったときから3年」、または「不貞行為(浮気・不倫)があった日から20年」のいずれか早い方で時効にかかります。
※民法の改正により、「不法行為の時から20年」は「除斥期間」から「時効」へと変更されました。2020年3月31日までに「不法行為の時から20年」が経過している場合、改正前民法が適用され、慰謝料請求はできなくなっていますのでご注意ください。
有責配偶者への慰謝料の時効
不貞行為(浮気・不倫)をした有責配偶者への慰謝料請求は、離婚した日を起算点として、3年で時効になります。
不貞行為(浮気・不倫)をしていたことを知らずに離婚し、離婚の日から3年以上経過して不貞行為(浮気・不倫)に気づいた場合は、不貞行為(浮気・不倫)の日から20年以内であれば『不貞行為に対する慰謝料』を請求できます。
不貞(浮気・不倫)相手への慰謝料の時効
不貞(浮気・不倫)相手への慰謝料請求は、不貞行為(浮気・不倫)があったことと、不貞(浮気・不倫)相手を特定したときから3年で時効となります。
不貞行為(浮気・不倫)をしていること分かっているが、不貞(浮気・不倫)相手が誰だかわからない場合は、時効は進行しません。
もっとも、不貞行為(浮気・不倫)から20年経過した場合は、時効が成立してしまいます。
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