不貞行為(浮気・不倫)を理由とする慰謝料請求の方法について
- 不貞行為
夫または妻の様子がおかしく、浮気や不倫を疑って悩んでおられる方もいるかもしれません。
浮気や不倫の定義は人によって異なりますが、離婚や慰謝料請求を考えたときに法律上問題となるのは、その行為が「不貞行為」に該当するかどうかとなります。
一般的に使われる「浮気」や「不倫」が必ずしも「不貞行為」に該当するわけではありません。
第8回目となる今回のコラムでは、不貞行為(浮気・不倫)に対する慰謝料の請求方法について解説いたします。
目 次 [close]
慰謝料の請求先
まず、慰謝料を請求する相手先として不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者と、不貞行為(浮気・不倫)の相手方が考えられます。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者と、不貞行為(浮気・不倫)の相手方双方に慰謝料を請求するパターンか、不貞行為(浮気・不倫)の相手方のみに請求するパターンのどちらかが一般的です。
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者への慰謝料請求の方法
不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者への慰謝料の請求は、離婚手続きの中で行われることが一般的です。
まずは協議から始まり、協議でまとまらない場合は調停、調停でもまとまらない場合は訴訟となるのは他の離婚に関する手続きと同じです。
各手続きの中で、財産分与などの条件とともに、不貞行為(浮気・不倫)に対する慰謝料についても定められることになります。
また、不貞行為(浮気・不倫)に対する慰謝料は離婚をしていなくとも請求することはできます。そのため、婚姻関係を継続した状態であっても、配偶者に対して慰謝料請求することは法律上可能といえます。ただし、同一世帯で金銭が移動するだけのことになりますので、よほどの事情がない限り、あまりメリットがあるとはいえません。
一般的に、婚姻関係を継続する場合は、不貞行為(浮気・不倫)の相手方のみに請求することが多いです。
不貞行為(浮気・不倫)の相手方への慰謝料請求の方法
不貞行為(浮気・不倫)の相手方へ慰謝料請求の方法は、大きく分けて交渉と訴訟の2つの方法になります。さらに、慰謝料請求を自身で行うか、弁護士に代理人となってもらい慰謝料請求を行うかを選択する必要があります。
自身で慰謝料請求を行う場合は、時間的、精神的負担がデメリットとなりますが、金銭的負担は少ないといえます。弁護士に依頼する場合は弁護士費用等の金銭的負担が増えますが、時間的、精神的負担は少なくなります。
交渉による慰謝料請求の方法
不貞行為(浮気・不倫)の相手方との交渉の手段として、電話やメール、対面での交渉が考えられます。弁護士が利用する手段としては、内容証明郵便を送付することが一般的です。
内容証明郵便は、郵便で送付した内容を日本郵便が送付日から5年間証明してくれるものです。内容証明郵便を送付することにより、法的に慰謝料の支払い義務が発生するわけではありませんので注意してください。
いずれの方法をとるにせよ、後に訴訟に移行する可能性を考えて、交渉の内容は証拠化しておくことをおすすめいたします。特に対面や電話で交渉を行う際は、言った言わないのトラブルになることが多いですので、会話をボイスレコーダーなどで録音しておくと良いでしょう。
自身で交渉を行う際の注意点として、感情的になって脅迫や強要といった刑法上の犯罪を起こしたり、相場からかけ離れた額の慰謝料を請求してしまわないよう、冷静に対処しましょう。また、対面で交渉を行う場合は、自宅などの密室を避け、比較的静かなカフェなどで行うと良いでしょう。
最終的に示談がまとまれば合意内容を示談書にまとめましょう。示談書には、慰謝料の金額、支払期限、支払い方法、清算条項等を記載することが一般的です。
不貞行為(浮気・不倫)の相手方が慰謝料の支払いをちゃんと行ってくれるか不安な場合は、強制執行が可能な公正証書にしておくと良いです。
訴訟による慰謝料請求の方法
交渉により慰謝料について合意できない場合は、裁判で慰謝料請求をすることになります。請求する慰謝料の金額、請求の原因となった不貞行為(浮気・不倫)の事実を記載した訴状を裁判所に提出し、訴訟の提起をします。不貞行為(浮気・不倫)の相手方が不貞行為を認めていない場合は、不貞行為(浮気・不倫)の証拠を提出しなければなりません。
裁判が始まると、双方の主張、反論が述べられることとなります。通常、裁判がある程度進むと裁判官から和解案が提示されます。和解案は裁判官の心証をもとにした内容となっており、双方で内容を調整しながら和解できるか判断します。裁判上の和解が成立すると、確定判決と同じ効力を持つ和解調書が作成されます。
和解も成立しない場合は、判決に進むこととなります。通常、判決の前には尋問という手続きが取られ、当事者や証人が裁判所に出頭し、裁判官や双方の代理人からの質問に答えることとなります。最終的には判決が言い渡されます。
不貞行為(浮気・不倫)の相手方のみへの慰謝料請求の問題点
不貞行為(浮気・不倫)は不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者と、不貞行為(浮気・不倫)の相手方の共同不法行為です。不貞行為(浮気・不倫)の相手方のみから慰謝料を受け取っても、不貞行為(浮気・不倫)の相手方は、不貞行為(浮気・不倫)をした配偶者へ慰支払った謝料の一部を請求することができます。これを求償権と言います。
夫婦が離婚していれば求償権は問題となりませんが、婚姻関係を継続する場合は、求償権が行使されると、世帯から不貞行為(浮気・不倫)の相手方に対して金銭を支払うことになってしまいます。
こういった求償権の問題を防ぐためには、予め慰謝料を請求する段階で求償権の放棄を要求するとよいでしょう。ただし、その際は、不貞行為(浮気・不倫)の相手方から求償権の放棄を慰謝料減額の交渉材料とされてしまう可能性があります。
慰謝料の額や求償権の放棄について合意できれば、公正証書を作成するなどして後のトラブルに備えましょう。
- 2021.09.06
不貞行為(浮気・不倫)を理由とする離婚の進め方について - 2021.08.30
不貞行為(浮気・不倫)の証拠について - 2021.08.23
不貞行為(浮気・不倫)の相手方の責任について