養育費の算定方法 ~夫または妻に収入がない場合〜
- 養育費
では、権利者または義務者に収入がない場合は、養育費の額は、どのように決めることになるのでしょうか。
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夫(または妻)が稼働していない場合の収入認定
潜在的稼働能力があると認められる場合
働いてお金を得られる能力があり、またその機会があるにもかかわらず、収入がない夫(または妻)や、不相当に低額な収入にとどまる夫(または妻)について、潜在的に稼ぐ力(潜在的稼働能力)があるとして、収入があるものと取り扱って、養育費を算定することになります。なお、収入をいくらと擬制するかが問題となりますが、賃金センサスを用いるなどすることが考えられます。
潜在的稼働能力があると認められない場合
自分自身の病気や高齢のために働くことができなかったり、乳幼児の監護や病人の監護のために働くことができなかったりする夫(または妻)の場合は、潜在的に稼ぐ力(潜在的稼働能力)がないため、収入があるものと取り扱うべきではありません。
また、稼働する能力や稼働する機会があったとしても、就労環境や年齢を考慮して、短時間労働者の賃金センサスを用いるなど、具体的な事情に応じた収入の擬制がなされるべきです。
夫(または妻)が稼働していない場合の潜在的稼働能力の有無の判断
潜在的に稼ぐ力がない妻(又は夫)が養育費の請求をした場合、潜在的に稼ぐ能力があると誤った判断がなされてしまうと、私的扶養が生活保護に優先すると定めた生活保護法4条2項の趣旨に反する事態になるおそれがあるため、潜在的稼働能力については、具体的事実を十分に検討して慎重に判断がなされるべきです。
大阪高裁平成20年10月8日決定
権利者である妻の基礎収入について潜在的稼働能力の有無が争われた裁判例で、裁判所は、「抗告人は、相手方が、長男を幼稚園に通わせ、長女を保育園に預けていることから、就業が可能であるので、少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力があるものとして扱うべきである旨主張するが、潜在的稼働能力を判断するには、母親の就労歴や健康状態、子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきところ、本件では、相手方は過去に就労歴はあるものの、婚姻してからは主婦専業であった者で、別居してからの期間は短いうえ、子らを幼稚園、保育園に預けるに至ったとはいえ、その送迎があり、子らの年齢が幼いこともあって、いつ病気、事故等の予測できない事態が発生するかも知れず、就職のための時間的余裕は必ずしも確保されているとはいい難く、現時点で相手方に稼働能力が存在することを前提とすべきとの抗告人の主張は採用できない」旨判断しました。
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