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再婚を理由とする養育費の減額について

  • 養育費

養育費の権利者または義務者が再婚した場合、それに合わせて養育費の減額請求をすることはできるのでしょうか。

 本コラムでは、再婚を理由とする養育費の減額について解説いたします。

再婚で養育費は減額されるか

 原則として、当事者のどちらかが「再婚しただけ」では、養育費の減額は認められません。ただし、再婚によって事情の変更があったと認められる場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。

 以下、ケースに従って解説いたします。

義務者が再婚する場合

 養育費の支払義務者が再婚する場合、ただ、再婚したというだけでは養育費の減額事由とはなりません。

 義務者が再婚相手に対して扶養義務を負う場合、義務者の扶養義務を負う人数が増えるため、子どもに対する養育費の減額を求めることができます。ただし、再婚相手の収入が低い、または無収入の場合であっても、潜在的稼働能力等によって収入を認めるのが相当な場合は、収入があるものとして扱われるため、養育費の減額事由とはなりません。

再婚相手が自己の生活を賄うに足りない収入しか得ていないとしても、当該再婚相手は、昭和48年生まれの女性であり、少なくとも平成28年以降は美容業を自営しているというのであるから、その稼働能力には問題がないと推認されるところ、そうであるにもかかわらず、年齢と経歴に相当する収入を得ることなく、赤字の自営業を何年も営んでいるとすれば、当該再婚相手は自らの潜在的稼働能力をあえて活かしていないものと評価せざるを得ず、このような当該再婚相手の存在をもって、未成年者らの養育費の減額事由に該当するとみることはできない。

名古屋高裁令和2年2月28日決定

義務者と再婚相手の間に子どもが生まれた場合

 義務者が再婚し、再婚相手との間に子どもを新たにもうけた場合、親は養育する義務があります。再婚によって生まれた子どもに対する扶養義務と元配偶者との子どもに対する扶養義務は同等と考えられているため、養育費の減額が認められる可能性が高くなります。

抗告人は、再婚し、再婚相手との子をもうけたことを事情の変更として主張するところ、平成24年2月に抗告人に新たな扶養義務者が生じたことは、本件和解条項の基礎とされた事情の変更に当たる。

広島高裁令和元年11月27日決定)

 ただし、養育費の合意成立時点ですでに再婚相手が妊娠していた場合は、予期し得ない事情変更があったとはいえないので、減額が認められない可能性が高いです。

義務者が再婚相手の連れ子と養子縁組する場合

 再婚相手に連れ子がおり、義務者が連れ子と同居していたとしても、義務者と連れ子が養子縁組をしていない場合は、連れ子の扶養義務は実親が負い、義務者は当然には扶養義務を負いません。そのため、義務者が連れ子と養子縁組していない場合は、原則、養育費の減額請求においては考慮されないと考えられています。

 しかし、義務者が連れ子と養子縁組した場合は、義務者と連れ子の間に法律上の親子関係が生じ、義務者の扶養家族が増えるので、養育費の減額が認められる可能性は高くなります。

 ただし、この場合も養育費の合意時に再婚相手との交際、および連れ子の存在が前提となっていれば、その後の養子縁組は予見しまたは予見し得たといえ、減額が認められない可能性もあります。

 また、義務者が連れ子と養子縁組していなかったとしても、義務者と連れ子の実際上の生活関係を考慮して、減額が認められる場合もあると思われます(東京高決平成28年7月8日決定は、権利者が再婚し、その再婚相手と子どもが養子縁組をしていない事案において、権利者、子ども、再婚相手の実際上の生活関係等の様々な事情を考慮して、義務者が負担すべき養育費を判断しています。)。

権利者が再婚する場合

 権利者が再婚したとしても、子どもと権利者の再婚相手との間に当然に親子関係が生じるわけではないので、義務者が依然として子どもの第一次的な扶養義務者であり続けます。そのため、権利者が再婚したというだけでは養育費の減額事由とはなりません。

権利者の再婚相手と子どもが養子縁組をする場合

 権利者の再婚相手と子どもが養子縁組をする場合、子どもの第一次的な扶養義務者は再婚相手となり、再婚相手の年収に応じて養育費の減額ないし免除が認められる可能性が高いです。

両親の離婚後、親権者である一方の親が再婚したことに伴い、その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合、当該子の扶養義務は、第一次的には、親権者及び養親となった再婚相手が負うべきであるから、非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費は零になるものと解される。

東京家裁令和元年12月5日審判

 なお、養子縁組により第一次的な扶養義務者は再婚相手となったとしても、義務者は第二次的な扶養義務者であり続けます。第二次的な扶養義務者は、第一次的な扶養義務者の扶養能力が欠ける状態となった時に、扶養義務を負うことになります。

権利者の再婚相手と子どもが養子縁組しない場合

 この場合、再婚相手は子に対して扶養義務を負わないので、基本的には義務者が第一次的な扶養義務者であり続けます。しかし、再婚相手に経済的余裕があり、事実上子どもが再婚相手の扶養を受けており、義務者の負担を求める必要性がほとんどない場合は、権利者と義務者との間の公平の観点から、義務者の負担義務を軽減することも考えられます。

まとめ

 以上のように、ただ再婚したという事実のみでは、当然に養育費が減額されるわけではありません。しかし、個別のケースによっては養育費の減額が認められる可能性が高いものもあります。

 養育費の減額請求でお悩みの方は、ご相談ください。