医者・医師・歯科医師を夫にもつ妻の離婚について ~妻が医療法人の理事、監事になっている場合~
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このような場合、実際に妻が医療法人の理事、監事として業務を担っている場合と単に名義だけ用いられている場合がありえますが、いずれの場合であっても、離婚に伴い、夫から、医療法人の理事、監事地位を辞するよう要求されることがあります。
医療法人を経営している夫からすれば、離婚に伴って夫婦関係を清算するとともに、医療法人の関係も清算しておきたいと考えているわけですが、ただ、妻からすれば、医療法人における地位を失うことによって、それまで得ていた収入を完全に断たれる場合も考えられます。
では、このような場合、妻はどのように対応すればよいのでしょうか。
前提として、医療法人の理事、監事の選任、解任の手続きについて、医療法で以下のように定められています。
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医療法人の理事、監事について
医療法人は、原則として、理事を3人以上、監事を1人以上置かなければなりません(ただし、医師又は歯科医師が常時1人又は2人勤務する診療所を1か所のみ開設する医療法人については、都道県知事の許可を受けた場合は、理事は、1人又は2人でもよいとされています。)
役員の選任
社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議により、財団医療法人の役員は、評議員会により選任されることとなっています。
役員の解任
社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議により、財産医療法人の役員は、評議員会の決議により、役員を解任することができることとなっています。
社団たる医療法人について
理事
決議要件を満たした場合、いつでも解任することができることとなっています。
決議要件は、社員総会の出席社員の過半数とされています。
監事
決議要件を満たした場合、いつでも解任することができることとなっています。
決議要件は、社員総会の出席社員の3分の2以上とされています(定款により、別段の定めを設けることも可能です。)。
財団たる医療法人について
理事
①職務上の義務に違反し又は職務を怠ったとき
または
②心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えられないとき
に、解任することができることとされています。
決議要件は、評議員会の出席評議員の過半数とされています。
監事
①職務上の義務に違反し又は職務を怠ったとき
または
②心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えられないとき
に、解任することができることとされています。
決議要件は、評議員会の出席評議員の3分の2以上です(寄附行為により、別段の定めを設けることも可能です。)。
妻が社団たる医療法人の理事、監事であった場合
上記のとおり、妻が社団医療法人の理事、監事であった場合、決議要件さえ満たせば、いつでも理事、監事を解任することができるため、夫側が社員の多数を占めており、有効に解任の決議がなされた場合は、妻において役員の地位を争うことは困難です。
他方で、解任された社団医療法人の理事、監事は、解任について正当な理由がない場合は、医療法人に対して、解任によって生じた損害の賠償請求をすることが可能です。
そして、正当な理由とは、医療法人の役員に法令・定款違反の行為がある場合や、心身の故障があり職務に支障がある場合など、役員としての適性がない場合などをいうと考えられています。
そのため、「離婚をするから」という理由のみでは、役員の解任に正当な理由があるとはいえず、妻は、医療法人に対して損害の賠償を請求することができます。
なお、医療法人の役員の解任によって生じた損害とは、役員を解任されなければ在任中又は任期満了時に得られた利益をいい、具体的には、役員報酬や退職金相当額がこれにあたると考えられています。
そして、役員の任期は、2年を超えることができないので(再任することは可能です)、医療法人に対し損害賠償を請求するか否かは、役員を解任されなければ得られるはずであった利益がどの程度であるかを考慮して、判断することになるものと思われます。
妻が財団たる医療法人の理事、監事であった場合
妻が財団たる医療法人の理事、監事であった場合は、上記のとおり、
①職務上の義務に違反し又は職務を怠ったとき
または
②心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えられないとき
に解任が認められますので、「離婚をするから」という理由のみでは、解任をすることができません。
万が一、解任理由がないにもかかわらず、役員の解任決議をなされてしまった場合は、医療法人に対して、役員の地位の確認等を求めることが考えられます。
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