会社経営者(社長)の夫をもつ妻の離婚について ~株式を財産分与する際の株式の評価方法(DCF法)~
- 会社経営者(社長)
会社経営者の夫が保有している自社株式の評価方法
夫が会社経営者である場合、夫(及び妻)が自社の株式を保有している場合が多いと思われます。
自社株式が婚姻後に夫婦の協力により形成された財産であった場合は、夫婦共有財産として、離婚の際に財産分与の対象となります。
しかしながら、多くの場合は、夫が保有する自社株式が非公開株式(市場価格のない株式)であるため、財産分与を行う際に、自社株式の価値をどのように見積もって財産を分けるべきか、夫婦間で問題となりがちです。
このような場合、何らかの方法で、株式の価値(=会社の価値)を算出しなければなりません。
非公開株式の価値の算出にはいくつかの方法がありますが、ここではそのうちのDCF法を紹介します。
DCF法とは
DCF法とは、事業を行うことによって生み出される将来のキャッシュフローを割り引くことで株式の価値を算定する方法をいいます(DCF=Discounted Cash Flow)。
DCF法では、期待されるフリーキャッシュフローを一定の割引率によって現在価値に還元して、対象企業の「事業価値」を算定します。
そして、事業に供されていない「非事業用資産の価値」を、この「事業価値」に加算することで、「企業価値」を導き、さらにそこから「有利子負債等の価値」を減算することにより「株主価値」を導きます。
デューデリジェンス(投資用の不動産取引、企業合併や買収などで把握しておくべき情報などを、状況に合わせて適性に査定・評価する一連の義務活動をいいます。)によって修正された将来事業計画を反映させることで株式価値を算定するため、DCF法はデューデリジェンスの結果が直接反映されることになります。
配当還元方式による財産分与の例
例えば、発行済株式総数が150株である自社の株式を、夫が100株、妻が50株保有しており、その株式が全て夫婦共有財産である場合で、DCF方式によると自社の株式の価値が1株あたり1万円の場合を考えます。
この場合、夫は、100万円に相当する自社の株式を保有しており、妻は50万円に相当する自社の株式を保有していることになりますので、株式そのものではなく、株式に代わる代償金を受け取る方法により財産分与を行う場合は、妻としては、150万円の2分の1である75万円から、既に妻が保有している50万円相当の株式価値を差し引いた、25万円を金銭で受領すると、夫の保有する自社株式を公平に分与できることになります。
また、妻自身の株式を夫にすべて分与する形で財産分与を行う場合は、妻は、自社株式50株を夫に分与するとともに、夫から75万円を金銭で受領すると、夫婦が保有する自社株式を公平に分与することができます。
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