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会社経営者(社長)の夫をもつ妻の離婚について ~夫が会社の債務を連帯保証している場合の財産分与~

  • 会社経営者(社長)
夫が会社を経営している場合、その会社と連帯して、夫個人が、会社の債務の連帯保証人となっている場合があります。

このような場合、夫の連帯保証債務は離婚時の財産分与に影響を及ぼすのでしょうか。

一般的な債務の財産分与について

財産分与には、夫婦の共有財産を公平に清算するとの意味合いがありますので、夫が借り入れた負債であっても、実質的に夫婦が共同で負担したと評価できる場合は、妻との間で財産分与の対象となると考えられています。

例えば、自宅の住宅ローンや自動車ローンなどの夫婦共有財産形成のための債務、生活費の不足を補填するための借入、子どもの教育ローンなど、婚姻生活を維持するために必要であった債務は、財産分与の中で清算がなされるべきであると考えられています。

夫が会社の債務を連帯保証している場合の財産分与について

会社を主たる債務者とする連帯保証債務は、会社を運営するための債務であって、婚姻生活を維持するために必要であった債務ではないため、実質的に夫婦が共同で負担した債務とは評価できないと考えられます。

そのため、経営者である夫が会社の債務を連帯保証している場合であっても、原則として、離婚時の財産分与に影響は及ぼさないものと考えられます。

夫から過大な財産分与を受けた場合

例外的に、夫が妻に対し不相当に過大な財産分与を行った場合は、詐害行為取消権行使の対象となったり、夫の破産時に財産分与が否認権の対象となったりする場合があります。

この点、離婚に伴う財産分与と詐害行為の成否が問題となった最判昭和58年12月19日は、
「離婚における財産分与は、夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配するとともに、離婚後における相手方の生活の維持に資することにあるが、分与者の有責行為によって離婚をやむなくされたことに対する精神的損害を賠償するための給付の要素をも含めて分与することを妨げられないものというべきであるところ、財産分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮すべきことは民法768条3項の規定上明らかであり、このことは、裁判上の財産分与であると協議上のそれであるとによって、なんら異なる趣旨のものではないと解される。したがって、分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず、分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解すべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方は、右のような場合であってもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないものと解すべきである。そうであるとするならば、分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」旨判断しております。

この判決は、詐害行為取消権の行使について裁判所の見解を示したものですが、否認権の行使の場面においても、同様の考え方がとられると考えられます。

そのため、会社の債務を連帯保証している場合に限らず、夫が負債を負っている場合には、財産分与の方法について、注意が必要です。