会社経営者(社長)を夫にもつ妻の離婚について ~妻が会社の従業員になっている場合~
- 会社経営者(社長)
妻としては、会社を退職した場合、勤務先を失うこととなり、離婚後の収入が完全に途絶えてしまう場合もある一方で、会社を退職しない場合、元夫の経営する会社で勤務を継続することの気まずさもありますので、夫の要求にどのように対応するか、慎重に検討する必要があります。
そもそも、夫婦の離婚問題と会社における雇用関係の問題は全く別個の問題なので、妻としては、離婚とは別に、会社との雇用関係をどのようにするかを考えなければなりません。
以下、ケースごとに検討します。
退職勧奨された場合
退職勧奨とは、雇用主が従業員に対し退職を促す行為のことです。
つまり、社長である夫が、従業員である妻に、自主退職を促す場合がこれにあたります。
あくまで労働者側である妻の自由な意思に基づく退職を促すものですので、退職勧奨をされた妻は、退職に応じる義務はありません。
離婚後も会社で働き続けたいとの考えるのであれば、退職を拒絶することも考えられます。
解雇された場合
解雇とは
解雇とは、雇用主が一方的に従業員との間の雇用契約を解消する行為をいいます。
つまり、社長である夫が一方的に従業員である妻をクビにする場合がこれにあたります。
なお、解雇には、一般的に、懲戒解雇、整理解雇、普通解雇の3種類があります。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、会社の従業員が規律違反や非行を行ったときに、懲戒処分として行うための解雇のことをいいます。
整理解雇
整理解雇とは、会社の経営悪化により、人員整理のために行う解雇のことをいいます。
普通解雇
普通解雇とは、懲戒解雇・整理解雇以外の解雇のことをいいます。
ここで、労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めており、懲戒解雇・整理解雇・普通解雇のどの場合であっても、労働契約法16条の規定が適用されますので、会社や社長である夫の一方的な都合や、不合理な理由による解雇は認められません。
そのため、「離婚をするから」という理由のみでは、解雇が有効とは言えない場合が大半であると考えられます。
このように、離婚をするからといって、直ちに妻の会社における従業員の地位が脅かされるわけではありません。
ただし、離婚後も、夫や夫の親族が働く会社で勤務を続けていくことは気まずくて働き辛いなどの事実上の問題もありえますので、妻としては、離婚後、どのような仕事につき、どのような生活を送りたいのか、よく検討したうえで、会社における従業員の地位をどうするのか、判断すべきものと考えられます。
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