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会社経営者(社長)の夫をもつ妻の離婚について ~婚姻費用・養育費の算定~

  • 会社経営者(社長)
夫婦間にはお互いの生活を支える義務があるため、夫婦が別居している場合、夫婦の一方は、他方に対して、収入に応じた生活費(=婚姻費用)の支払いを求めることができます。

また、子どもがいる場合は、離婚後は、子と生活を共にする親が、子と生活を共にしていない親に対して、収入に応じた養育費の支払いを求めることができます。

婚姻費用と養育費の相場の額は、家庭裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表によって、確認することができます。

夫が会社経営者の場合の婚姻費用・養育費の算定方法

上記のとおり、婚姻費用と養育費の相場の額は、家庭裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表によって確認することができますが、算定表では、縦軸の左欄と横軸の下欄の年収は、給与所得者の年収を、縦軸の右欄と横軸の上欄の年収は、自営業者の年収を示しているところ、夫が会社経営者の場合は、夫の年収について、どのように考えるべきでしょうか。

この点、夫が社長の場合、夫は、会社から、役員報酬を受領していることになりますが、役員報酬は給与に該当するとして、給与所得者の年収の欄を確認して、婚姻費用や養育費を算定することになります。

夫の役員報酬の額が実体と異なる場合の婚姻費用・養育費の算定方法

夫や夫の親族が、会社の経営者であった場合、役員報酬の額を、夫の意思で変更することができることが多く、また、役員報酬額は、税金対策などに影響を受けやすいため、役員報酬の額が、その会社役員の生活水準の実態と合致しないケースもあります。

このような場合は、妻において、役員報酬に関する資料が信用できないことを主張するとともに、婚姻費用・養育費算定の基礎となる収入が、役員報酬よりも大きいものであることを主張することになりますので、事実の把握や証拠の収集の努力を行うことが望ましいです。

役員報酬の差し押さえ

会社経営者である夫との間で婚姻費用・養育費の額の取り決めを行ったにもかかわらず、夫が婚姻費用・養育費を支払わない場合で、婚姻費用・養育費の取り決めを、公正証書や、調停調書、和解調書などで行っていた場合は、妻は、夫の財産を差し押さえることができます。

夫に役員報酬がある場合は、役員報酬を差し押さえることが可能です。また、役員報酬は、給料と異なり、差押禁止債権に該当しないと考えられているため、その全額を差押することが可能です。

民事執行法第152条(差押禁止債権)
1 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
 一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
 二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の4分の3に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前2項の規定の適用については、前2項中「4分の3」とあるのは、「2分の1」とする。