改正民事執行法を踏まえた財産開示手続 その3 ~預貯金債権、振替社債等に関する情報取得~
- 債権回収
婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料等、離婚時に生じる金銭給付について不履行がある場合、判決や調停調書などの債務名義があれば、強制執行手続きを行うことが可能です。
令和元年の民事執行法改正(令和2年4月1日施行)では、預貯金債権や振替社債等に関する情報取得の制度が新設されました。
預貯金債権、振替社債等に関する情報取得
申立権者
①執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者
②債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者
要件
①強制執行開始のための一般的要件を備えていること
②先に実施した強制執行の不奏功等
・配当の手続において完全な弁済を受けることができなかったとき
・知れたる財産に強制執行を実施しても完全な弁済を得られないことの疎明があったとき
申立て
第三者からの情報取得手続は、債権者の申立てにより行われます。
申立書には、申立人、債務者、情報提供を命じられるべき者の氏名、名称、住所や申立の理由を記載する必要があります。
また、債務者については、できる限り、その氏名または名称の振り仮名、生年月日、性別、その他債務者を特定するための事項を記載すべきとされています。
第三者とは
預貯金債権の場合、第三者は、銀行等となります。
振替社債等の吐合、第三者は、振替機関等となります。
第三者が提供すべき情報
預貯金債権 預貯金債権の存否並びにその預貯金債権が存在するときは、その預貯金債権を取り扱う店舗並びにその預貯金債権の種別、口座番号及び額
振替社債等 振替社債(振替機関が取り扱う社債等であって、第三者の備える振替口座簿における債務者の口座に記載され、又は記録されたものに限る。)の存否並びにその振替社債等が存在するときは、その振替社債等の銘柄及び額又は数
執行裁判所は、第197条第1項各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
⑴ 銀行等(銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、株式会社商工組合中央金庫又は独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構をいう。以下この号において同じ。)債務者の当該銀行等に対する預貯金債権(民法第166条の5第1項に規定する預貯金債権をいう。)に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの
⑵ 振替機関等(社債、株式等の振替に関する法律第2条第5項に規定する振替機関等をいう。以下この号において同じ。)債務者の有する振替社債等(同法第279条に規定する振替社債等であって、当該振替機関等の備える振替口座簿における債務者の口座に記載され、又は記録されたものに限る。)に関する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの
2 執行裁判所は、第197条第2項各号のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、前項各号に掲げる者であって最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。
民事執行法第207条 (債務者の預貯金債権等に係る情報の取得)
3 前2項の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
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