改正民事執行法を踏まえた財産開示手続 その4 ~給与債権に関する情報取得~
- 債権回収
婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料等、離婚時に生じる金銭給付について不履行がある場合、判決や調停調書などの債務名義があれば、強制執行手続きを行うことが可能です。
令和元年の民事執行法改正(令和2年4月1日施行)では、給与債権に関する情報取得の制度が新設されました。
給与債権に関する情報取得
申立権者
執行力のある債務名義の正本を有する債権者のうち、債務名義の対象となっている請求権が民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権である場合
債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
民事執行法151条の2第1項
① 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
② 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
③ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
④ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
婚姻費用請求権、養育費請求権を有する方は、給与債権に関する情報取得の申立権者となります。
要件
①強制執行開始のための一般的要件を備えていること
②先に実施した強制執行の不奏功等
・配当の手続において完全な弁済を受けることができなかったとき
・知れたる財産に強制執行を実施しても完全な弁済を得られないことの疎明があったとき
③財産開示手続の前置
財産開示手続については、こちらをご参照ください。
申立て
第三者からの情報取得手続は、債権者の申立てにより行われます。
申立書には、申立人、債務者、情報提供を命じられるべき者の氏名、名称、住所や申立の理由を記載する必要があります。
また、債務者については、できる限り、その氏名または名称の振り仮名、生年月日、性別、その他債務者を特定するための事項を記載すべきとされています。
第三者とは
・ 市町村(なお、申立てを行った年の1月1日時点の住民票上の住所の所在する市町村となります。)
・ 日本年金機構等の厚生年金保険の実施機関等
第三者が提供すべき情報
①給与または報酬もしくは賞与の支払をする者の存否
②その者が存在するときは、その者の氏名または名称および住所
③その者が国である場合には、債務者の所属する部局の名称および所在地
執行裁判所は、第197条第1項各号のいずれかに該当するときは、第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
1 市町村(特別区を含む。以下この号において同じ。)
債務者が支払を受ける地方税法(昭和25年法律第226号)第317条の2第1項ただし書に規定する給与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(当該市町村が債務者の市町村民税(特別区民税を含む。)に係る事務に関して知り得たものに限る。)
2 日本年金機構、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会又は日本私立学校振興・共済事業団
債務者(厚生年金保険の被保険者であるものに限る。以下この号において同じ。)が支払を受ける厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第3条第1項第3号に規定する報酬又は同項第4号に規定する賞与に係る債権に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるもの(情報の提供を命じられた者が債務者の厚生年金保険に係る事務に関して知り得たものに限る。)
民事執行法第206条 (債務者の給与債権に係る情報の取得)
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