退職金の財産分与➁ ~財産分与額の算出方法について~
- 財産分与
夫婦が婚姻期間中に協力して形成、維持してきた財産は共有財産として財産分与の対象となりますが、退職金はどのような扱いを受けるのでしょうか。
本コラムでは、退職金の財産分与額の算出方法ついて解説いたします。
財産分与の対象となる期間
退職金が財産分与の対象なる場合であっても、同居期間に対応する額に限定されるのが原則となります。
そのため、財産分与の対象となる退職金は、「働いていた期間」と「同居期間」が重なる部分に応じた金額となります。婚姻前に働いていた期間や、別居から離婚の間に働いていた期間は、財産分与の対象にはなりません。
分与額の計算方法
分与額の計算方法は以下の計算式で求めることができます。
退職金形成に対する寄与度に関しても、特段の事情がない限りは他の共有財産の分与と同じく、2分の1の割合で分与することとなります。
裁判例、審判例
将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合には、将来受給するであろう退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する分を算出し、これを現在の額に引き直したうえ、清算の対象とすることができると解すべきである。
これを本件についてみると、原告は昭和58年3月に現在の勤務先に入社し平成17年9月に定年退職予定であるところ、前記認定の事実によっても、右入社当初から別居に至った平成7年5月までは、原告と被告の夫婦としての婚姻生活が継続していたと認めるべきである。また、原告は平成11年2月時点で退職した場合でも、すでに699万円の退職金を受け取れるとされているし、原告の供述及び弁論の全趣旨によれば、原告が現在の勤務先の会社に6年後の定年時まで勤務し、退職金の支給を受けるであろう蓋然性は十分に認められる。そうであるとすれば、原告としては、退職時までの勤務期間総数271か月(昭和58年3月から平成17年9月まで)のうちの実質的婚姻期間147か月(昭和58年3月から平成7年5月)に対応する退職金につき、中間利息(法定利率5パーセント)を複利計算で控除して現在の額に引き直し、その5割に相当する額を被告に分与すべきである。
東京地裁平成11年9月3日判決
退職金関係であるが、1761万円がその対象となるが、その退職金等は、相手方が××(株)に勤務した昭和62年(1987年)2月から平成11年(1999年)3月までの12年2月(146か月)の期間を対象としたものであるが、申立人が相手方と同居してその維持形成に寄与したのは平成4年(1992年)9月までの5年8月(68か月)と認めるべきであるから、その同居期間だけを寄与期間と計算すべきである。そうすると、1761万円に寄与期間率(0.4658)を乗じた820万円(1万円未満四捨五入)が計算と基礎となるところ、申立人の妻としての寄与率について2分の1を下回るべき特段の事情は認められないから、それを乗ずると410万円となる。
横浜家裁平成13年12月26日審判
申立人及び相手方は、婚姻後別居に至るまでの間、不仲になった時期があったものの、それぞれの役割を果たし、夫婦共同財産の維持をしてきたということができる。したがって、本件においては、別居時に自己都合退職した場合の退職金額(平成20年×月×日に自己都合退職した場合の退職金額983万6500円)に同居期間(昭和58年×月から平成20年×月までの294か月)を乗じ、それを別居時までの在職期間(昭和53年×月から平成20年×月までの362か月)で除し、更に50%の割合を乗じるのが相当と解される。
東京家裁平成22年6月23日審判