退職金の財産分与➂ ~財産分与の方法について~
- 財産分与
夫婦が婚姻期間中に協力して形成、維持してきた財産は共有財産として財産分与の対象となりますが、退職金はどのような扱いを受けるのでしょうか。
本コラムでは、退職金の分与方法について解説いたします。
目 次 [close]
退職金が既に支給されている場合
退職金が既に支給されている場合、退職金は預貯金や株式、不動産など別の資産に変化していることが多いと思われます。そういった場合は、それらの財産を財産分与の対象財産として清算することになります。
退職金が将来支給される場合
退職金が将来支給される場合、退職金の評価方法について、以下の方法が考えられます。
- 定年退職時の退職金額で評価
- 離婚時に退職したと仮定した場合に支払われる退職金額で評価
①定年退職時の退職金額で評価する場合
定年退職時に受け取れる退職金を、勤務期間のうちの婚姻期間の割合で按分して計算します。
離婚時を財産分与の支払時期とした場合は、中間利息の控除によって現在の額に評価し直さなければなりません。
中間利息の控除とは、将来受け取るお金を前払いしてもらう場合、将来にわたって発生するはずの利息分を差し引くことをいいます。
民法上の法定利率が年3%であることから(2023年3月時点)、この年3%の利息を基準として、中間利息を控除します。
退職金を勤務期間のうちの同居期間の割合で按分した結果、800万円と評価された場合
1年前倒しでもらうと仮定すると、800 ÷ 1.03 ≒ 7,766,990 となります。
さらに、2年前倒しでもらうと仮定すると、800 ÷ 1.03 ÷ 1.03 ≒ 7,540,767 となります。
財産分与の支払時期を退職金の支払時とする場合は、中間利息の控除は必要ありません。
②離婚時に退職したと仮定した場合に支払われる退職金額で評価する場合
離婚時点で勤務先を退職したと仮定した場合に支払われる退職金を分与財産と評価し、勤務期間のうちの同居期間の割合で按分します。
この評価方法の場合、一般的には「①定年退職時の退職金額で評価する場合」に比べ、金額が低額となる事が多いです。
退職金の支払時期
退職金の財産分与は、離婚時に支払うことが原則となります。
しかし、この場合、離婚の時点において退職金が勤務先から支給されていないため、財産分与の支払い義務者の資力がないことも考えられます。
そのため、退職金の財産分与に関しては、分割払いや、将来退職金が支払われる時期に支払うという合意をする場合もあります。