退職金の財産分与~定年退職まで年数がある場合に退職金が財産分与の対象となるかが問題となった事例(東京家審平成28・2・26)
- 財産分与
婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与との対象となります。
本コラムでは、将来支給される予定の退職金の財産分与が問題となった事例(東京家審平成28・2・26)を紹介いたします。
裁判所の判断
調査嘱託の結果…によると、相手方が、基準時に自己都合退職した場合の退職金が1391万9700円であることが認められる。
相手方は、退職金が将来の不確定な債権であり、勤務先の経営状態が変化する可能性が高く、退職時期、退職理由等により影響されることを指摘するが、退職金は、給与の後払いと評価すべき部分を含んでおり、少なくとも、相手方は、基準時に退職すれば上記退職金の支給を受けることができたことが認められるのであるから、財産分与においても、上記のうち婚姻期間に対応する部分につき、その対象とすべきである。
また、相手方は、申立人の寄与がないことも主張するが、相手方作成の陳述書…や日本離婚訴訟での本人尋問…においても、ロサンゼルス市に赴任するまでは夫婦仲が険悪であったということはなく、ロサンゼルス市への赴任後も別居に至るまで、関係修復のための努力をしていたというのであるし、夫婦仲が悪化した後も子らの養育はされていたのであるから、婚姻後基準時までに対応する退職金について、申立人の寄与がないということはできず、財産分与の割合を変更すべきであるともいえない。
さらに、相手方は、アメリカ離婚判決が定めた養育費が不当に高額であり、アメリカ合衆国では退職金制度がないので、相手方の収入を不当に高額に認定したことなどを主張して、退職金を財産分与の対象とすることが権利濫用であると主張するが、養育費の定めが高額であったからといって、退職金を財産分与の対象とすべきではないといえるものではないし、養育費の定めについては、日本において強制執行を許す旨の判決が確定していることは上記のとおりであるから、相手方の主張は採用できない。
そこで、相手方は、平成2年4月1日に現在の勤務先に就職し、平成8年2月14日に申立人と婚姻したから、上記退職金のうち、基準時までの勤務期間に対する婚姻期間の割合で財産分与の対象となると解するのが相当である。申立人は、就職後相当期間は退職金の支給がされないのが通常であるとも主張するが、退職金の支給がされない期間を含めた勤務期間に対して退職金が支給されるのであるから、相手方の勤務先において、就職後どの程度で退職金の支給がされることになるのかは、上記認定を左右する事情ではない。
相手方が就職してから申立人と婚姻するまでの期間が約70.5月、申立人との婚姻後基準時までが約180.5月であるから、以下のとおり、婚姻期間に相当する退職金額は1000万9983円となる。
13,919,700 × 180.5 ÷ 251 ≒ 10,009,983
##コメント
退職金受給時期までに相当の期間がある場合、支給の見込みがないとして、財産分与の対象にすべきではないとの考え方もありますが、実務上、退職金の支給時期が先であっても、財産分与の対象とすることが一般的です。
本審判も、そのような前提にたち、退職金の財産分与を判断しています。