生命保険の財産分与 ~生命保険の財産分与の方法~
- 生命保険
生命保険が財産分与の対象財産となる場合、財産分与の実行にあたり、保険契約をどのようにするかが問題となります。
生命保険については、解約返戻金相当額が財産分与の対象となることは生命保険の財産分与 〜生命保険が財産分与の対象となるか〜で説明したとおりですが、財産分与を実行するに当たり、生命保険は全て解約する必要があるのでしょうか。
生命保険は、金融資産としての一面もありますが、本来的には将来の疾病や事故を見据えた生活保障です。生命保険の再加入の際は、保険年齢の上昇により保険料が上がることが一般的ですし、健康状態いかんでは生命保険に再加入できない可能性もあります。
また、終身型の生命保険では、金利情勢によって、加入当時よりも運用利回りが下がってしまう可能性もあります。このような場合、将来の解約時における解約返戻金額に大きな差が出てしまいます。
このように、財産分与時に生命保険を解約して再加入するよりも、そのまま契約を継続したほうが良いケースも多々ありますので、慎重な判断が求められます。
生命保険契約を継続する場合
生命保険契約を財産分与後も継続する場合は、下記の2つについて考慮する必要があります。
①契約者の変更
②代償金の支払等
契約者の変更
当事者双方の話し合いによって、生命保険の契約者を、一方当事者から他方当事者に変更することができます。この場合、保険会社に対し、生命保険の名義変更請求書(保険会社により呼称は異なります。)を提出する必要があります。
例えば、契約者が夫、被保険者が妻、受取人が夫、の生命保険を契約している場合、契約者と受取人を妻に名義変更し、名義変更後の保険料は妻が支払うことが考えられます。この場合のメリットは、若いうちから加入していた保険の場合、生命保険を離婚時に解約した後、同内容の生命保険に再加入するよりも保険料を安く抑えることができるところにあります。
なお、財産分与の審判や離婚の判決において、保険契約の変更が命じられることはありません。あくまで、協議や調停での合意に基づき実行されるものです。
代償金の支払等
保険契約を継続する場合、契約者は、配偶者に対して、基本的に財産分与基準時の解約返戻金相当額の2分の1を代償金として支払うか、同価値の他の分与対象の財産を取得させることになります。
婚姻前から生命保険を契約していた場合は、婚姻時の解約返戻金の金額と、財産分与基準時の解約返戻金の金額との差額の2分の1について、代償金等として支払うことが考えられます。
生命保険金の受取人の変更について
生命保険の契約者の変更は行わず、保険金の受取人のみを変更する場合もあります。一般的には、離婚後は生命保険金の受取人を元配偶者から実親や子どもに変更しておくケースが多いです。
生命保険金の受取人変更手続きは、元の受取人の同意がなくとも、契約者が単独で行うことが可能ですので、忘れずに手続きを行うとよいでしょう。
なお、保険期間中に被保険者を変更することはできません。
生命保険契約を解約する場合
生命保険契約を解約する場合は、契約者が保険会社に対して解約の申込みを行うことになります。
解約の申込みに伴い、解約返戻金が支払われますので、基本的には解約返戻金の2分の1ずつを夫婦で分けることになります。
保険契約の解約の際には解約申請書、保険証書、契約者の本人確認書類などが必要となりますので、事前に保険会社に対して必要書類を確認しておくと良いでしょう。
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