株式の財産分与 〜非公開株式の評価方法(DCF法)〜
- 株式
非上場株式の財産分与
夫婦が離婚する際、どちらか一方(もしくは双方)が、株式を保有している場合には、その株式も財産分与の対象となり得ます。
上場株式の場合には、その株価を基準として財産分与を行うことになりますが、非上場株式の場合には、市場の取引価格が存在しないため、その株式をどのように評価するのかが問題となります。
なお、上場株式の評価方法についての詳しい説明についてはこちらをご参照ください。
非上場株式の評価方法
非上場株式を評価するにあたっては、「純資産方式」や「類似業種比準方式」、「配当還元方式」等の評価方法がありますが、そのうちのひとつとして「DCF法」という評価方法があります。
なお、純資産方式についての詳しい説明はこちら を、類似業種比準方式についての詳しい説明はこちらこちらを、配当還元方式についての詳しい説明はこちらをご参照ください。
DCF法
DCF法とは、会社が将来生み出すであろうフリーキャッシュフローの総合計を現在価値に割り引いて、株価を算定する方法です。
ちなみに、DCF法とは、Discounted Cash-Flow 法の略です。
フリーキャッシュフローとは、一般的に、営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを合計したものを言います。
具体的な計算方法は次のとおりです。
$$株式の価格=\frac{D1}{1+K1}+\frac{D2}{(1+K2)^2}+\frac{D3}{(1+K3)^3}+・・・+\frac{Dn}{(1+Kn)^n}+\frac{L}{(1+Kn)^n}$$
※各事業年度のリターン:D1,D2,‥‥,Dn
※一般利子率にリスクプレミアムを上乗せした割引率:K1,K2,‥‥,Kn
※n年後になされる残余財産分配の額:L
DCF法のメリット
DCF法は、会社が将来生み出すフリーキャッシュフローを基に計算するため、会社の将来に対する期待等を反映することができます。
そのため、M&Aでよく利用される評価方法です。
DCF法のデメリット
DCF法では、会社が将来生み出すフリーキャッシュフローを基に計算するため、あくまでも予想に基づく評価方法となります。
そのため、将来の事業計画の精度や信憑性によって、算定される価格が大きく変わってきてしまうというデメリットがあります。
財産分与における株価の評価方法
上述のように、DCF法にはメリットもデメリットもあります。
また、その他の評価方法(純資産方式や類似業種比準方式、配当還元方式等)にも、それぞれメリットやデメリット等があります。
そのため、財産分与を行う際に、どの算定方法によって株価を算定するかについては、具体的な事情を考慮したうえ、適切な方法を選択することが必要となります。
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