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株式の財産分与 〜非公開株式の評価方法(類似業種比準方式)〜

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非上場株式の財産分与

非上場株式とは、東証等の金融商品取引所に上場されていない株式のことをいいます。

非上場株式の場合、市場の取引価格というものが存在しませんが、非上場株式もまた財産である以上、夫婦の離婚に際して財産分与の対象となり得ます。

では、非上場株式が財産分与の対象となる場合、その株式の価格はどのように評価されるのでしょうか。

本稿では、株式の価格を評価する方法の一つである「類似業種比準方式」について説明させていただきます。

類似業種比準方式

非上場株式を評価する方法のひとつに「類似業種比準方式」があります。

類似業種比準方式とは、国税庁のホームページで公表されている「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」の類似業種の株価等を基礎として、1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額を類似業種と比準して、評価対象である非上場会社の1株あたりの評価額を算定する評価方法です。

類似業種比準方式の計算式

類似業種比準方式の具体的な計算式は次のとおりです。

A×(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)÷3×0.7×E/50=1株の価格

「A」=類似業種の株価
「Ⓑ」=評価会社の1株当たりの配当金額
「Ⓒ」=評価会社の1株当たりの利益金額
「Ⓓ」=評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
「B」=類似業種に属する会社の1株当たりの配当金額
「C」=類似業種に属する会社の1株当たりの利益金額
「D」=類似業種に属する会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
「E」=1株当たりの資本金等の額

※なお、上記計算式は、大会社の株式を評価する場合の計算式になります。
そのため、中会社の株式を評価する場合には上記計算式中の「0.7」を「0.6」に、小会社の株式を評価する場合には「0.5」に変更する必要があります。

※中会社及び小会社の株式の価格を評価する場合には、上記計算式によって算出された価格にさらに一定の割合を乗じる必要があるため、類似業種比準方式は主に大会社の株式を評価する際に用いられます。

大会社とは

従業員数が70人以上の会社又は次のいずれかに該当する会社は、大会社として扱われることになります。

業種 総資産価格及び従業員数 直前期末以前1年間における取引金額
卸売業 20億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。) 30億円以上
小売・サービス業 15億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。) 20億円以上
その他 15億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。) 15億円以上

中会社とは

従業員数が70人未満の会社で、次のいずれかに該当する会社(大会社に該当する場合を除く。)は、中会社として扱われることになります。

業種 総資産価格及び従業員数 直前期末以前1年間における取引金額
卸売業 7000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。) 2億円以上30億円未満
小売・サービス業 4000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。) 6000万円以上20億円未満
その他 5000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。) 8000万円以上15億円未満

小会社とは

従業員数が70人未満の会社で、次のいずれにも該当する会社は、小会社として扱われることになります。

業種 総資産価格及び従業員数 直前期末以前1年間における取引金額
卸売業 7000万円未満又は従業員数が5人以下 2億円未満
小売・サービス業 4000万円未満又は従業員数が5人以下 6000万円未満
その他 5000万円未満又は従業員数が5人以下 8000万円未満

類似業種比準方式のメリット

類似業種比準方式は、市場での取引価格を反映することができるという点において、有用といえます。

類似業種比準方式のデメリット

類似業種比準方式は、会社によっては、類似会社や類似業種の企業価値評価を探すことが難しく、適切な比較ができない場合があるというデメリットがあります。

また、開業前や開業3年未満の会社、休業中や清算中の会社の株式の評価には使用できません。

なお、これらの会社の株式の評価をする際は、「純資産方式」によります(清算中の会社の場合は、原則として「清算分配見込額」により評価し、「清算分配見込額」の算出が困難な場合に「純資産方式」により評価します。)。

純資産方式についての詳しい説明はこちらをご参照ください。

財産分与にあたっての株式の評価方法

上述のように、一般的に株式の評価方法としての類似業種比準方式には上述のようなメリットとデメリットがあり、過去の裁判例においても、株式の評価方法として、類似業種比準方式を採用するか、それとも他の時価純資産方式、DCF法等を採用するかについては、定まっていません。

しかしながら、株式についてどのような評価方法を採用するかによって、財産分与の内容が大きく変わることもあり、そのような場合、上述の類似業種比準方式のメリット、デメリットを踏まえ、的確に株式の評価方法について主張することが重要になります。