不動産の財産分与⑤ ~自宅を売却した後の売買代金の分配について~
- 不動産
婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与との対象となります。
本コラムでは、財産分与にあたり、自宅を売却した後の売買代金の分配について解説いたします。
売買代金からの諸費用・税金等の控除
自宅を売却して得た売却代金から、売却に必要な諸費用や税金、住宅ローンを控除し、控除後の残額を当事者間で分与割合に基づいて分配することが一般的です。
なお、自宅を売却する際に必要となる費用として、以下のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消費用および所有権移転登記手続費用(司法書士報酬・登録免許税)
- 印紙代(売主と買主が折半して負担することが一般的)
- 譲渡所得に対する所得税・住民税
なお、オーバーローンの場合、当事者間で分配する金銭が存在しないということになります。
頭金を特有財産から支出している場合の考慮
分配にあたって問題となるのが、自宅購入時の頭金を特有財産から支出していた場合です。
一般的に、自宅不動産の価値は購入時から下落するものなので、特有財産から支出した金額の全額を当然に支出した当事者が取得するというのは問題があります。
この点、自宅の評価額から、取得価額に占める頭金の割合を控除して、夫婦の実質的共有財産部分を算出した、大阪高等裁判所平成19年1月23日判決があります。
この判例によれば、財産分与の対象となる額は、以下の計算式から導かれます。
財産分与の対象となる額 = 自宅の評価額 × (1 – 特有財産の額 ÷ 取得額)