不動産の財産分与⑨ ~自宅を売却せずに維持する際に住宅ローンが残る場合の検討事項~
- 不動産
婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与との対象となります。
本コラムでは、財産分与にあたり、自宅を売却せずに維持する際に住宅ローンが残る場合の検討事項について解説いたします。
ローン債務者が自宅を取得する場合
自宅がアンダーローンの場合、自宅を取得する側は相手方に対して、自宅の売却代金からローンの残元金を控除した金額を自宅の価値と評価して、各自の分与割合に基づいて分与額を決めることが考えられます。
名義変更
一般的に、ローン債務者が自宅の名義人になっている場合がほとんどです。自宅が夫婦共有名義になっていれば、単独取得する者への共有持分の移転を行います。
ローン債務者ではない者が自宅を取得する場合
この場合、ローン債務者は自宅を取得しないにもかかわらず住宅ローンを支払い続けねばならず、自宅の取得者は負担なしに自宅を取得することになります。
そこで、代償金の支払いの有無を検討する必要があるでしょう。なお、代償金の支払による解決のほかに、自宅以外に財産分与の対象財産があれば、そちらをローン債務者に取得させるなどの解決方法も考えられます。
名義変更
単独取得者が自宅の名義人でない場合には、取得者への名義変更が必要であり、もともと共有であれば、単独取得への共有持分の移転が必要となります。
なお、住宅ローンの約款においては、自宅を第三者に処分した場合には、ローン債務について期限の利益を喪失する旨規定されていることがあります。
財産分与による処分であっても、この規定に該当すると取り扱われ、残債務の一括返済を求められますので注意が必要です。
居住者が新たにローン債務者となる場合
ローン債務者の変更を行うためには、ローン債権者である金融機関等の承諾が必要となります。
金融機関等の承諾が得られれば、ローン契約者の変更手続きに入ります。具体な手続については、各金融機関等に確認することとなります。