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不動産の財産分与⑪ ~財産分与によって自宅を夫と妻の共有名義とする場合の検討事項について~

  • 不動産

 婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与の対象となります。

 本コラムでは、財産分与にあたり、自宅を夫と妻の共有名義とする場合の検討事項について解説いたします。

共有名義のリスク

 離婚後も、諸事情により自宅を共有名義のままにしておく場合もあるかもしれません。

 しかし、自宅を共有名義にしておくと様々なリスクがあります。

相手の同意なく売却できない

 自宅が共有名義の場合、各当事者がそれぞれ持分を有することになり、共有者全員の同意がなければ自宅を売却することができません。

 そのため、自宅を売却したい場合は、元配偶者と連絡を取り、元配偶者の協力を得なければなりません。

 また、元配偶者から協力を得られたとしても、自宅の売却代金について、持ち分に応じた分配をしない場合、贈与税などが掛かる可能性があるため注意が必要となります。

相続時にトラブルになる

 各当事者の持分はもちろん相続の対象となります。

 離婚後に、当事者の一方が再婚し、新たに子供が生まれたあとに相続が発生した場合は、持分が分散し、権利関係が複雑になります。

住宅ローンの支払

 居住しない当事者が住宅ローンを支払う場合、住宅ローンの支払義務者が住宅ローンの支払を怠る場合があります。

 住宅ローンを組む場合は、一般的に、自宅に抵当権を設定することとなりますが、ローンの支払が滞納すると、自宅に設定されている抵当権が実行され、自宅が競売によって処分されてしまう可能性があります。その場合、居住者は自宅から立ち退かなければなりません。

税金の支払い

 不動産の固定資産税等について、共有者は持分に関係なく、それぞれが連帯して全額を支払う義務を負います。

 納税通知書は、居住地、持分割合、登記順位などをもとにして、市区町村が共有者のいずれか1人に送付します。そのため、税金の支払いのたびに、元配偶者と連絡を取らなければならなくなります。

 また、一方が税金を滞納した場合、他方当事者の持分についても、差し押さえがなされる可能性があります。