不動産の財産分与⑬ ~自宅の建物が借家の場合の財産分与について~
- 不動産
婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与との対象となります。
本コラムでは、財産分与にあたり、自宅の建物が借家の場合の財産分与について解説いたします。
貸主の承諾
借家の場合も、借地と同様に、賃借人を変更する場合には、賃借権の譲渡に該当します。それゆえ、賃借権の譲渡について、貸主の承諾を得る必要があります。
もっとも、自宅の使用態様が大きく変わることがないのであれば、賃貸人に対する背信行為とは認められない特別の事情があるとして、賃貸借契約の解除が認められない場合もあると思われます。
しかし、賃借人が変更する場合には、新しい賃借人と貸主との間で、新たな賃貸借契約を締結する形がよいでしょう。
公営住宅の場合
公営住宅について、公営住宅法27条2項により、原則、権利の継承ができません。
公営住宅の入居者は、当該公営住宅を他の者に貸し、又はその入居の権利を他の者に譲渡してはならない。
公営住宅法27条2項
ただし、条例等により、名義人の死亡や離婚等のやむを得ない事情がある場合には、従前からの同居人であれば賃貸人たる地方公共団体の許可を条件として権利の継承が認められている場合もあります。
貸主との交渉の際の注意事項
借地権の場合と同様に、貸主との間で、賃借人の地位の譲渡ないし新たな賃貸借契約の締結について交渉します。ただし、借家の場合は借地権の場合とは異なり、貸主の許可が得られないとき、裁判所に対して貸主の承諾に代わる許可を求めることができません。
無事に貸主の了解が取れれば、貸主と自宅に住み続ける者との間で、新たな賃貸借契約に関する新たな合意書を作成します。