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不動産の財産分与⑭ ~収益不動産の財産分与について~

  • 不動産

 婚姻期間中に夫婦が取得した不動産は、その名義が夫または妻のいずれであるかにかかわらず、夫婦共有財産であり、財産分与との対象となります。

 本コラムでは、収益不動産の財産分与について解説いたします。

収益不動産の資産価値

 財産分与の協議や調停において、路線価、固定資産評価額、公示地価などの公的評価基準等を参考にするなどして夫婦間で評価額についての合意をすることができれば、合意した評価額に基づき、財産分与の方法を検討することとなります。

 評価額について合意を得られない場合は、不動産会社の査定や不動産鑑定士による鑑定によって算出した評価額を前提に財産分与の方法を検討することになります。

 また、収益不動産に抵当権が設定されている場合は、不動産ローンの処理について検討する必要があります。

 この点、収益不動産の時価から不動産ローンの残金を控除した残額が、分与対象財産であるとされる場合が多いです。

 また、控除後の残額がマイナスであれば、財産分与請求権は生じないことになりますが、必要に応じて不動産ローンの残金をどのように処理するかについて協議する必要があります。

分与方法

単独名義にする場合

 収益不動産を一方の単独名義にするに際し、当該収益不動産の評価額が、単独名義人の取得すべき財産分与額を上回る時、単独名義人は他方に対して、その差額を代償金として支払うか、他の分与対象財産を取得させる必要があります。

 また、収益不動産を財産分与する場合は、賃貸人たる地位の承継が問題となります。

 賃貸人たる地位は、譲渡人と譲受人との合意により承継させることができます。合意がない場合であったとしても、収益不動産が譲渡され、譲受人が所有権移転登記をしている場合には、当該不動産の譲渡により、特段の事情がないかぎり、賃貸人としての地位がこれに伴って当然に譲受人に移転し、旧所有者は賃貸借関係から離脱するとされています。なお、いずれの場合であっても、賃貸人たる地位の承継に、賃借人の同意は不要です。

 収益不動産が分与対象財産である場合、法定果実である既発生の賃料債権についても検討が必要となります。

 分与対象財産の法定果実について、基準時に現存する限り、分与対象財産となるとされています。したがって、既発生の賃料債権については、収益不動産とは別に財産分与においてどのように処理するかを決めなければなりません。

共有名義にする場合

 収益不動産を共有名義にする場合、分与割合に応じた共有にするケースが多いと思われます。この場合、代償金の支払は不要となります。

 既発生の賃料債権については、「単独名義にする場合」で先述したとおりとなります。ただし、共有名義とする場合には、将来発生する賃料についてどのように取り扱うかについて協議しなければなりません。

売却する場合

 売却による精算をする場合には、賃料や敷金・保証金の取扱に留意する必要があります。

 賃料については、引き渡しの前日までは売主に、引渡し日以降は買主に帰属させることが考えられます。

 また、収益不動産の譲渡がなされ、所有権移転登記がなされた場合には、賃貸人たる地位の承継がなされるところ、敷金等の返還義務についても、新賃貸人に承継されます。

 そのため、売買契約の際は、買主との間で、敷金の金額等について事前に確認しておくとよいでしょう。

 不動産の売却代金から売却にかかる諸費用を控除して不動産ローンを弁済し、なお残額があれば、残額について、分与割合に応じて夫婦で分配することになります。

賃借人への連絡

 賃貸人たる地位に変更があった場合には、新たな賃貸人、賃料の支払先等について、賃借人に連絡をしておくとよいでしょう。