不動産の財産分与~結婚前に購入して結婚後に住宅ローンを支払っていた自宅不動産の財産分与が問題となった事例(さいたま家川越支審平成29・4・28) - 小西法律事務所(離婚の法律相談)離婚について弁護士への無料相談は、小西法律事務所(大阪市北区)まで

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不動産の財産分与~結婚前に購入して結婚後に住宅ローンを支払っていた自宅不動産の財産分与が問題となった事例(さいたま家川越支審平成29・4・28)

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事件の概要

 本件は、申立人が、元妻である相手方に対し、離婚に伴う財産分与を求めた事案です。

 申立人と相手方は、平成13年に婚姻した夫婦で、子はいませんでした。

 相手方は、平成27年、自宅を出て申立人と別居し、申立人と相手方は、同年調停離婚しました。

 申立人と相手方の間では、平成28年、相手方ほか1名が申立人に対し、解決金230万円を支払い、他に何らの債権債務がないことを確認する(ただし、財産分与を除く。)旨の和解が成立しました。

争点

  1. 婚姻前に購入した不動産が財産分与の対象となるか
  2. ローン返済金額について、どのように評価するか

裁判所の判断

 申立人は、婚姻前の平成8年、実父の土地上に、代金1500万円で自宅建物を新築した。代金のうち600万円は申立人の自己資金、残りの900万円は住宅ローンでまかなった。住宅ローンは、申立人の給与から返済し、その額は年間69万円(元利均等払い)である。申立人は、父から相続した土地の売却代金から、平成21年に260万円、平成24年に67万円を返済して、住宅ローンを完済した。自宅建物の平成28年度の固定資産評価額は282万7305円である。

 自宅建物の取得資金1500万円のうち、申立人の自己資金600万円の分は特有財産であり、残りの住宅ローン900万円の分は全体の6割に相当する。この住宅ローンは、①申立人が婚姻前に特有財産で約4年半(年額69万円、合計約759万円)、②申立人と相手方が婚姻中に共同して約11年間(同、合計約620万円)、③相手方が終盤に特有財産から合計327万円を返済し、①~③の合計は約1396万円であった。上記②の共同返済額は全ローン返済額の約5割を占める(返済額中の元金の割合は、上記①が少なく、②が中位で、③が多い。)。

 そこで、自宅建物の取得資金のうち住宅ローンの割合(6割)に、全ローン返済額のうち共同で返済した上記②の割合(5割)を乗じると、自宅建物の約3割が夫婦共同財産ということができる。自宅建物の平成28年度の固定資産評価額は282万7305円であるから、その3割である84万8000円が夫婦共同財産である(千円未満四捨五入)。

コメント

1 婚姻前に購入した不動産が財産分与の対象となるか

 夫婦の一方が婚姻前に取得した財産は、特有財産となりますので、財産分与の対象とはなりません。

 しかし、不動産を購入するにあたり、住宅ローンを組んで、婚姻後に夫婦共有財産からローンの支払を行った場合には、夫婦共有財産が財産の形成に貢献していると考えられます。

 そのため、不動産について、夫婦共有財産で返済した部分については、財産分与の対象として考慮することが相当です。

2 ローンの返済額の評価方法

 本事例等から、婚姻前に購入した不動産について、住宅ローンを婚姻後に返済している場合、財産分与の対象とすべき金額は、以下の計算式で導くことができると考えられます。

財産分与対象額 = 不動産の時価 ×(婚姻後の返済額 ÷ 住宅ローン総額)

 なお、頭金を支払っていたり、婚姻後に特有財産から住宅ローンを返済していたりする場合は、計算が複雑になります。詳細については、弁護士に相談されることをおすすめいたします。