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面会交流の履行の実現方法

  • 面会交流
面会交流調停または審判により面会交流の内容が決まっても、相手(監護親)が履行しない場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。

監護親の任意の履行が得られないときは、以下のような対応を取ることが考えられます。

✔履行勧告
✔間接強制
✔損害賠償請求
✔再調停の申立

履行勧告

調停や審判などの取り決めを守らない相手方に対し、調停・審判を下した家庭裁判所に履行勧告を申立てることができます。

履行勧告とは、家庭裁判所から相手方に取り決めを守るよう説得したり、勧告したりする制度です。
(履行勧告についての詳しい説明はこちら

間接強制

相手方が履行勧告を行っても面会交流に応じない場合、家庭裁判所に間接強制を申立てることが考えられます。

間接強制とは、民事執行法172条に定められている強制執行の一種です。債務者に対して、金銭の支払いなど一定の不利益を課すことにより、債務者を心理的に圧迫し、義務の履行を強制する方法です。

ただし、面会交流の定めをしていたとしても、必ずしも間接強制が認められるわけではないため、注意が必要です。

損害賠償請求

調停や審判によって定められた面会交流が実施されていない場合、権利者は不当に権利を侵害され、精神的な苦痛を受けていることになります。

そのため、相手方に対して損害賠償を請求できる可能性があるのです。

しかし、面会交流ができなかった場合のすべてが債務不履行又は不法行為となるわけではありませんので、注意が必要です。

監護親の行為に違法性が認められる場合

調停や審判で面会交流について取り決めを定めていても、子どもの成長や、非監護親・監護親双方の生活環境の変化によって、面会交流の拒否事由が事後的に生じたり、履行不能になることはあり得ます。

それゆえ、面会交流が履行されないからといって、監護親の行為に、直ちに損害賠償義務が発生する程度の違法性が認められるわけではありません。

この点、判例は、「一方当事者が,正当な理由なくこの点に関する一切の協議を拒否した場合とか、相手方当事者が到底履行できないような条件を提示したり、協議の申入れに対する回答を著しく遅滞するなど、社会通念に照らし実質的に協議を拒否したと評価される行為をした場合には、誠実協議義務に違反するものであり・・・いわゆる面会交流権を侵害するものとして、相手方当事者に対する不法行為を構成するというべきである」との判断をしています(福岡高等裁判所平成28年1月20日判決 判例時報2991号68頁)。

監護親の損害賠償義務を認めた事案

東京地裁昭和63年10月21日判決

協議離婚の際父母間で合意した父と未成熟子との面接交渉が母によって妨害されたとして、父子の母に対する慰謝料請求を認めた事例です。

静岡地裁浜松支部平成11年12月21日判決

離婚した父親の子に対する面接交渉を拒否した親権者である母親の不法行為責任が認められた事例です。

東京高裁平成22年3月3日判決

Aは、Bとの別居後、長女を監護養育していたところ、AB間で、長女の面接交渉にかかる調停が成立しました。

その後、Aは、Bに対し、離婚の訴えを提起し、Aを長女の親権者と指定する判決が確定しました。

しかしながら、Aは、面会交流について、調停による合意を遵守しませんでした。

そこで、Bが、長女との面接交渉権を侵害されたと主張して、Aに対し、慰謝料の支払を求めた事例です。

裁判所は、慰謝料70万円(請求300万円)の限度で債務不履行に基づく請求を認容した原判決を相当としました。


再調停の申立

面会交流を実施していく過程で、監護親や子どもの生活状況が変化し、調停で決められた頻度や時間では面会交流を持続することが難しい場合があります。

こういった場合、間接強制を申立てる前に、再調停の申立てを検討することが考えられます。

面会交流は、当事者双方の協力関係に基づいて実施されることが理想ですので、新たに調停を申立てて、現在の生活状況に応じた面会交流の方法を協議することが望ましいといえるでしょう。